LAWSON presents 夏川椎菜 1st Live Tour プロットポイント
「影」は太陽が照らす明かりの下でも、月が照らす明かりの下でも存在しその形を映すものですが、その中身は黒く塗りつぶされてはっきりしない。
映し出されたその影はそのもの自身と同じであって同じでない。曖昧なようでその存在は確かにある。ネガティブだったり、卑屈なことに対して「あの人は影がある」なんて言い方をしたりしますが、きっとそんなものは誰しもが抱えているものなのだと思います。
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夏川椎菜さんのソロアーティストとしての活動は”ジシン”を持って始まったものではなかったのかもしれません。ameblo.jp
当時のブログからも、不安しかないという言葉があったり、インタビュー等でもTrySailの他2人が先にソロデビューしていてこともあって劣等感や、音楽というものに対する難しさに苦悩していた、というような言葉が本人の口からも語られていました。
自分の歌いたいこと、やりたいことがアウトプットできなかった当時のもどかしさから変化を見せた2ndシングルのリリースをきっかけに、自分のやりたいことをレジュメに起こして提出するまでになった夏川さん。
そんな中で制作された彼女の1stアルバム「ログライン」。
そしてその楽曲たちと迎えた1stライブ、ツアー。
「LAWSON presents 夏川椎菜 1st Live Tour プロットポイント」。
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このライブは、曲を続けて歌うだけのライブでは無かった。ダンサー(名称:ヒヨコツインズ)2人と主人公のパンダが舞台上での寸劇を挟みながら楽曲を披露していく、ひとつの物語のように進んでいった。
始まった1曲目は「グレープフルーツムーン」。彼女の1stシングル表題曲であるこの曲から始まることは、この物語自体が彼女のものであることを表しているかのように思われました。しかし同時に円型のスポットライトに当てられた彼女の後ろには「影」が出来ていて、満月に浮かぶ影のように見え、その影が物語における主人公(便宜上 "ボク” とします。)のようにも見えた。
歌詞のなかにも「影」というワードがありますが、それは「かげ」ではなく「ねがい」とルビが振られていることからも夏川さん自身と”ボク”との関係性を示唆するようなもののように思えました。
そうして紡がれていく物語とログラインの楽曲。
最後の2曲となり、まず歌われたのは「パレイド」。
本人も認める救いがない曲。同時に劣等感を抱える全て人に寄り添える曲だと思っていて、私自身もこの曲に”救われ”ました。
この曲から夏川さんと"ボク"は同じステージに立ち、頭を垂れ、体を揺らし、物語と楽曲がリンクしていきます。不安や劣等感を抱えながら、アーティスト活動を始めた夏川さんと物語の中の"ボク”。その姿は鏡に映したようなそのままでは無くて、同じでありながら別の一面を見せているまさに影のように思えた。
そして最後の曲「ファーストプロット」。
この曲はアルバムでも最後に収録されていることと歌詞の内容から「パレイド」のアンサーソングを思わせるような曲となっていますが、この曲は「パレイド」とはうって変わって柔らかい笑顔を浮かべながら歌うのがとても印象的な曲。それは、「ログライン」というアルバムを通じてこれが"ボク"のストーリーだと”ジシン”を持って言えることが出来るからこそ出ているもののようだと感じます。
この曲のミュージックビデオの最後、それはこんな一文を夏川さん自身が本に綴って終わります。
自分をさがして 自分をさがして つまづいて 怖くなって それでも歩いた 不安でも歩いた 歩き続けて ようやく見えた
そしてアウトロに乗せて夏川さん自身が退場、その影を追うようにして"ボク”も退場したところで第1部は終了。
アンコール後「ここまでを夏川のフェーズ1とするならば、ここからはフェーズ2です!」ということを毎公演夏川さんの口から出ています。
"フェーズ(phase)"という言葉には「段階」という意味があります。毎公演言っていることなのでこの言い方にこだわりがあるように感じていて、まだ道の途中だ、また違った私を見せるぞ、というような強い意志を感じます。
「Ep01」収録曲から3曲を披露。
中でも固定曲となっている「ワルモノウィル」、こちらでもライトに当てられて映し出された影が檻に囚われた"わるい子”がそこにいるかのように感じられました。
そしてこの曲は私自身とみんなを応援し合う、私とみんなを繋ぐ曲です、と最後の曲「チアミーチアユー」を披露してライブは終了。1部では夏川さんを追うようにして退場した"ボク”は最後、夏川さんと手を繋ぎながら一緒に退場します。1部と2部は分けられているようで、ちゃんと繋がっているんだと再確認。
夏川さんが創り出すセカイに思いっきり没入出来る、素敵なライブでした。
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ツアー初日、千葉公演のMCでこんな言葉がありました。
「このライブは自分がやりたい!ということをたくさん詰めたライブです。アーティストとしてデビューしたときはやりたいと思うようなことが無くて、でも今こうしてやりたいと思えることがたくさんあるということがとても嬉しいです!」
この言葉が私にとってもめちゃくちゃ嬉しい言葉だった。
これからも夏川さんは自分の色を大事にしながら、色んなことに挑戦していくのだと思います。そこに映し出されるものがどんなものであるか、私は楽しみでしかないのです。